塔2022年10月号(十代・二十代歌人特集)を読む

短歌

最近塔を読むをサボってしまいすみません。
隔年開催のこちらの特集、読んでいきたいと思います。

2022年の塔「十代・二十代歌人特集」より

遠距離はほんとにつらいよ龍馬像 まじで疲れてばっかりっすよ
(長谷川琳)

ため池の水にさくらのはなびらがもうとうに落ちてました春
(永井貴志)

孫のため伊予柑を剥く父めがけ伊予柑が二度汁を飛ばしき
(瀧川和麿)

くさるのではなくて渇いて枯れるからこの恋は紫陽花にたとえたい
(加瀬はる)

カレンダーがうまく破れぬカレンダーをうまく破る才能がない
(西村鴻一)

うなじに汗こころに干潟 夕焼けの光は雲に裂けてひろがる
(田村穂隆)

戦争のニュースを見る噛み砕かれる味気ないアイスキャンディー
(卓紀)

こじあけて一生を内にねむりたいが樹は扉ではない諦める
(太代祐一)

友だちと集めまくった空蝉はそのあと海に捨てたんだっけ
(逢坂みずき)

この部屋は音楽で満たされているから悲しい知らせは入ってこれない
(朴木すみれ)

数式をあなたのために解いてみる思い出として答えが残る
(ドクダミ)

ハンガーに新しいワンピースをかけてここから夏のスタートとする
(音無早矢)

学校の総力を挙げ応援をするのも夏の風物詩である
(塩原礼)

あの囲い超えたら海と遊園地だと思ってた影のない街
(佐竹栞)

砂浜に二人の影が映りをり君が撮るから僕も撮りたり
(永山凌平)

火が見たい(あなたの舌があなたから逃げ出せなくて、)火を掴みたい
(帷子つらね)

それぞれの帰路にそれぞれの紫陽花わたしの帰路には青白い花
(川上まなみ)

その花はすぐに流れに飲み込まれて君から少し遠くに行きたい
(小島涼我)

少年の記憶の遠さに消えてゆく夏に交わしたコントラクト会議
(後藤英治)

カミュの忌のクロワッサンを包みし紙揉みゐれば滝の音に似てくる
(横井来季)

十本の手羽先食べて思うのはこれは何羽のにわとりなのか
(うにがわえりも)

真夏日の体温のままの僕を乗せ最終電車が淀川に浮く
(永田玲)

得体の知れないものではあるが荻窪で食べるんだからそれなりに美味い
(津隈もるく)

買い足した水に冷やされゆく胸もいつか一本の柊になる
(北虎あきら)

明滅のランプ ランプ明滅の 誘蛾灯とはよく言ったもの
(釘宮エヌ)

午前九時前で止まれる分針の瑞々しかる朝の道よ
(山尾閑)

空を見てこぼれるように降る雨に重ねられない雫の軌道
(濱本凛)

クロールす手末よりの泡沫はひかりに柔く来し方へ往ぬ
(秦知央)

雨は止みます。とパソコンに宣言されて本当の夏の夜空は
(的野町子)

ふりむけば規則まみれの学び舎は飛び立つための囲いであった
(山桜桃えみ)

一日の力の入れ方間違えて今日は朝からペペロンチーノ
(永田櫂)

夕焼けを眺める人の目の中に抜け道があるかもしれないよ
(豊冨瑞歩)

空気銃に空気充たしてゆく夏のわれ透きとほるからだを持たず
(浅野大輝)

午後五時を過ぎて増えたる怒声かな執務室には夕日が刺さない
(丸山萌)

朝蜘蛛を見逃してやる生活を誰に見てほしいわけでもないが
(森永理恵)

読みごたえがありました

ああこの人も! という方のお名前があり、読んでいて非常に楽しく発見がありました。